今回2/13よりウルビアマン!!の企画が始まるが、
この醸造所の直輸入のお願いには4年の歳月、そして10回以上の訪問を行った程思い入れのある醸造所だ。一度ストライキで電車が止まった日にも200ユーロ以上も払ってタクシーで彼らに会いにいった思い出もある。そんなデ・ドレ醸造所について説明したい。
ベルギー西フランダース州にて建築家、そして絵描きでもあるクリス氏がまだ学生だった頃から彼らの兄弟達と共に1835 年から使用されていた醸造所を買い取り、1980 年に趣味として週末にビール醸造を開始した。
しかし今と違いこの1980年頃はベルギービール、スペシャルビールは暗黒の時代。
次々と醸造所が閉鎖し続けていた。人々は彼らの事を本当に狂っている、うまくいくわけがないと揶揄した。
その心配とは裏腹に遊園地のようにも見える彼の醸造所は少量の醸造ながら
みるみるうちに世界中の熱狂的なビール愛好家だけでなく、世界中からのスタートアップ間近の醸造家訪れ近所の老人から子供までも集まる憩いの場所となっていく。
不思議でかわいらしいウルビアマン(クリス氏自身がデザイン)と呼ばれるマスコットとは対照的に力強いアルコール感とともにナッティーでスムース。しかし非常にドライな濃褐色のエールである。最初に醸造したビールはウルビア。
それに加えてアラビアを発表。だじゃれでアラビアと付けただけとは違い、
本格的なブロンドビールである。今では多くの地ビールが取り入れているドライホッピング(ホップを熟成中も漬け込む事)を行っている。
当時、ベルギーは醸造所が閉鎖を続け、一番原価が高いホップを減らして甘いエールがさらに増えたともいう意見が一部にあるが、彼は時代に逆行してドライホッピングを行った。
ウルビア レゼルバ2008 750ml
さらにこの醸造所が世界中に影響を与えたのはレゼルバのシリーズである。
彼らは西フランダース州特有のレッドビールのように樽にウルビアやクリスマスビールのスティル・ナハトを熟成させ、樽のタンニンや微生物によって変化させ新たなるビールを生み出す。
内緒。
彼らの醸造所へはアメリカやイタリアなどのクラフトビール業界でも名の知れた醸造家はほぼ訪れていると言っても過言ではない。今も多くの世界の醸造家の卵がここを訪れている。これは彼らの醸造所に行くと訪れた者の多くが帳簿に記載している。この中からきっと10年後、天才醸造家が生まれるのは間違いないだろう。
そして何よりもこの醸造所はエッセンの町、西フランダースの人々に愛されている。
土曜、日曜のみ醸造所は公開され醸造所のビアカフェで彼らのビールを楽しむ事が出来るが、そこは世界中のビール愛好家、世界中の醸造家、それを目指すもの。そして地元の老人から子供にいたるまで、まさにカオスであるが居心地のいい場所。多くの醸造所を始める者が自分もこのような場を作りたいと願うに違いない。このビアカフェで地元やクリスやエリス(奥さん)と語りながらウルビアパテを食べながら昔の原点を思い出し、未来を考える。
そう、飲食店を営む私もこれほど影響を受ける場所は他にそうそうない。このような場所を作りたいからこそいつまでも何度もこの場に向かうのだろう。
醸造所の倉庫部分を改装する直前 エッセンの町のみんなと記念撮影